高齢社会が進む中で、現在、成年後見制度が注目されています。
これは、高齢化、長寿命化が進むにあたり増える認知症のほか、精神障害等により判断能力が 不十分なために自ら契約等の法律行為、財産管理を行うことが困難な方に代わって生活を支援、 本人を保護する制度です。
2010年の段階で認知症を有する高齢者が160万人おり、このうち85歳以上は4人のうち1人が占めています
成年後見制度には2種類あり、「法定後見制度」、「任意後見制度」があります。
前者は、「後見」「保佐」「補助」の3種類があり、判断能力の程度など本人の事情に応じて決定します。この中で、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為を行う時に同意を与えたり、本人が同意を得ないで行った不利益な法律行為を後から取り消したりできます。成年後見人等は、特に指名がない限り、身近な弁護士、行政書士、社会福祉士などが引き受ける場合が多いです。
後者は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来、認知症などの判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を、公正証書で作成しておくというものです。
なお、任意後見人の選任後にその資質、事務内容に不安があるときは、家庭裁判所に任意後見監督人を選任し、任意後見人を監督することもできます。
まずは本人と面談し、万が一認知症になった場合に備えて、本人がやりたいこと、残した
いもの、誰に依頼したいかなど、将来の夢・要望をお伺いします。
次に、公証役場に出向き、お伺いした内容に基づき、公正証書契約書として作成します。
本人が認知症になったときに、家庭裁判所に任意後見契約書に基づき、任意後見人の選任
申立てをします。家庭裁判所が申立て内容を審査し、任意後見人に問題が無いと判断した
場合は、任意後見人の選任許可が下ります。なお、万が一、指名した任意後見人に問題が
あると判断されれば、家庭裁判所が別の適任者を選任することがあります。
任意後見人が選任されると、任意後見人がすべて財産管理をするため、認知症の本人が
勝手に財産を消費、処分をすることができなくなります。また、管理内容は毎月裁判所
に報告することが義務付けられており、任意後見人が不適切な管理をしている場合は、
家庭裁判所へ申し立てることで、任意後見人に対してさらに後見監督人を選任させるこ
とができます。